S&P 500と米国コアCPIの推移

記事更新日: 2025年9月11日 | グラフ更新日: 2025年09月11日

「インフレは株価の敵」とよく言われます。しかし、本当でしょうか?物価(コアCPI)と株価(S&P 500)の歴史的なシーソーゲームを一枚のグラフに描くことで、教科書通りにはいかない、複雑で面白い関係性が見えてきます。

なぜ物価と株価の関係が重要なのか?

物価の上昇(インフレ)は、企業のコスト増(原材料費、人件費)に繋がり、利益を圧迫する要因となります。また、インフレを抑えるための利上げは、経済全体を冷やし、株価の重しとなります。しかし一方で、緩やかなインフレは経済が成長している証でもあり、企業の売上増に繋がる側面もあります。この二面性を理解することが、市場を読み解く鍵です。

グラフで読み解く物価と株価のダンス

S&P 500と米国コアCPIの推移グラフ

「インフレに強い」米国株の歴史(長期グラフ)

長期グラフを眺めると、驚くべき事実が見えてきます。ITバブル期のように物価が安定していた時期はもちろんのこと、物価が上昇する局面でも、株価(緑の線)は長期的には右肩上がりを続けているのです。これは、米国企業が物価上昇分を製品やサービスの価格に転嫁し、利益を成長させ続けてきた力強さを示しています。

コロナ禍以降の逆相関(短期グラフ)

一方、短期グラフでは景色が異なります。2022年に物価(オレンジの線)が急騰した局面では、将来の利上げを警戒して株価は大きく下落。逆に、物価がピークを越えて下落を始めると、株価はそれを好感して上昇に転じています。2025年9月10日時点でS&P 500は6,532ポイントと高値圏にあり、物価も同7月時点で3.05%と、市場がインフレの鎮静化を織り込んでいる様子が伺えます。

このデータの応用的な見方

物価と株価の関係を見る上で重要なのは、物価の「水準」だけでなく「変化の勢い(モメンタム)」です。たとえ物価の水準が高くても、その上昇ペースが鈍化し始めると、市場は「インフレのピークは過ぎた」と判断し、株価は上昇に転じやすくなります。逆に、物価が低い水準からでも、急なペースで上昇し始めると、市場は将来の金融引き締めを警戒します。常に「変化の兆し」を探すことが、このグラフを使いこなすコツです。

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