S&P 500・CPI・政策金利の推移
これまでの物語のメインキャスト、株価(S&P 500)・物価(コアCPI)・金利(政策金利)が一堂に会しました。この一枚のグラフは、米国経済という壮大なドラマの相関図。三者の複雑な関係を読み解けば、市場の大きな流れを掴むことができます。
なぜこの3つの関係が重要なのか?
これまで見てきたように、物価は金利を動かし、金利は株価を動かします。しかし、それらは単純な一方通行の関係ではありません。株価が経済に影響を与え、それが物価に反映されることもあります。この3つの指標を同時に見ることで、経済が今どの局面にいるのか(好景気か、不景気か、安定期か)を立体的に把握することが可能になります。
グラフで読み解く「利下げ」のウソとホント

教科書が教えない「利下げ=株安」の局面(長期グラフ)
「利下げは株価にプラス」とよく言われますが、長期グラフを見ると、リーマンショック期(2008年頃)のように、FRBが急激な利下げ(赤い線が急降下)を行っている局面で、株価(緑の線)も暴落していることが分かります。これは、FRBが「経済が深刻な危機にある」と判断して利下げを行うため、市場の悲観ムードが勝ってしまう「不景気の利下げ」です。
唯一の例外?ITバブル期の「利下げ=株高」(長期グラフ)
しかし、ITバブル期(1990年代後半)には、FRBが段階的に利下げを行う中で、株価が大きく上昇しました。これは、景気は好調なままで物価だけが落ち着いていたため、FRBが景気をさらに後押しするために行った「好景気の利下げ」です。この二つの違いを理解することが極めて重要です。
このデータの応用的な見方
株式市場には、中央銀行の金融緩和によって株価が上昇する「金融相場」と、企業の業績拡大によって株価が上昇する「業績相場」という2つの局面があると言われています。このグラフは、市場が今どちらの相場にいるのかを判断する助けになります。金利の動きに株価が敏感に反応しているなら「金融相場」、金利が安定しても企業の業績(EPS)の伸びと共に株価が上昇しているなら「業績相場」と捉えることができます。今の市場がどちらの顔を持っているのか、このグラフから読み解いてみましょう。