物価指数(コアCPI・コアPPI・PCE)と失業率の推移
FRB(米中央銀行)が金融政策を決定する上で、車の両輪のように見ているのが「物価の安定」と「雇用の最大化」です。このグラフは、その両輪の状態を一枚で示してくれる、非常にパワフルな羅針盤です。
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各指標の読み解き
- コアCPI: 消費者から見た物価の「基調」です。私たちの生活実感に最も近い数字と言えるでしょう。
- コアPPI (厳密版): 企業(生産者)から見た物価の「源流」です。これが上がれば、遅れてCPIも上がる傾向にあります。
- PCE: FRBが最も重視する「公式の物価指標」です。経済全体の価格動向をより広く捉えています。
- 失業率: 景気の「体温計」です。この数字が低いほど、経済は好調であると判断されます。
現在地の分析
▼ 2025年8月15日時点の分析
グラフの右端、2025年7月時点のデータを見ると、各物価指標(PCE: 4.75%, コアPPI: 2.83%, コアCPI: 3.05%)は長期的なトレンドとしてはピーク時から落ち着きを見せています。しかし、直近の報道では同月のPPI(生産者物価指数)が市場予想を大幅に上回り、特にサービス価格の急騰を背景に短期的なインフレ再燃懸念が強まっています。
このグラフのコアPPIと報道で注目される数値に乖離が見られるのは、指標の定義が異なるためです。当グラフの指標は、短期的な価格変動が大きい「商業向けサービス」を除外して物価の基調的なトレンドを示しているのに対し、報道される一般的なコア指数はこれを含むため、足元の急な価格変動をダイレクトに反映します。
米国経済は、長期的なインフレ鎮静化のトレンドの中にありながらも、短期的な価格高騰リスクを抱える複雑な局面にあります。生産者側のコスト上昇が、実際に消費者物価へ本格的に波及するのか。その実態を判断する上で、次回のCPI発表が重要な試金石となるでしょう。なお、失業率(4.26%)は歴史的に見ればまだ低い水準を保っており、景気の底堅さも示唆されています。