米国の雇用統計(非農業部門雇用者数)の推移
毎月第一金曜日に世界中の投資家が固唾をのんで見守る、経済指標の王様「米国雇用統計」。景気のリアルな実態を映し出すこの指標は、FRBの金融政策、ひいては株価の未来を占う上で欠かせない重要データです。
なぜ雇用統計が重要なのか?
雇用統計の中でも特に注目されるのが「非農業部門雇用者数」の増減です。これは、米国の景気が拡大しているのか(雇用が増えている)、後退しているのか(雇用が減っている)を最もダイレクトに示す数字だからです。力強い雇用の伸びは個人消費を支え、企業業績を押し上げる一方、行き過ぎた雇用の過熱はインフレを招き、FRBによる金融引き締めの引き金ともなります。
グラフで読み解く雇用のトレンドと「揺らぐ信頼性」

景気後退のシグナル(長期グラフ)
長期グラフ(3ヶ月移動平均)を見ると、景気後退期(灰色の網掛け部分)には、雇用者数の増減がマイナスに転じていることが明確に分かります。コロナショックでの歴史的な落ち込みは特に衝撃的ですが、その後の回復もまた異例のペースでした。景気の大きなサイクルを捉える上で、この長期的な視点は欠かせません。
統計は真実を語るか?(短期グラフ)
短期グラフに目を向けると、現在この統計が直面している「信頼性」の問題が見えてきます。2025年に入ってから、雇用者数の伸びは明らかに鈍化しており、特に直近の7月と8月はゼロ近辺まで落ち込んでいます。さらに問題なのは、過去数ヶ月分のデータが後から大幅に下方修正される事態が相次いでいることです。これにより、速報値だけでは経済の実態を正確に捉えられないという懸念が市場で広がっています。
このデータの応用的な見方
月ごとの雇用者数は振れが大きいため、単月の数字だけで一喜一憂するのは危険です。グラフのオレンジ色の線で示されている「3ヶ月移動平均」を見ることで、より大きなトレンドを把握することが重要です。また、最近のように統計の信頼性が議論されている局面では、速報値だけでなく、修正値がどうだったかもしっかりと追跡する必要があります。市場が速報値に過剰反応した後に、修正値を見て冷静さを取り戻す、というパターンを理解しておくと、投資判断の精度が高まります。