米国のマネタリーベース推移
市場に溢れる「ドル」の総量、それがマネタリーベースです。しばしば「ドルの印刷」とも呼ばれるこの指標は、FRBの金融政策の根幹をなし、経済の行く末を左右するほどの力を持っています。
なぜマネタリーベースが重要なのか?
マネタリーベースとは、中央銀行(FRB)が供給する通貨の総量のこと。「ハイパワードマネー」とも呼ばれ、これが信用創造の基礎となります。FRBがマネタリーベースを増やす(金融緩和)と、市場にお金が出回りやすくなり、金利が低下して経済活動が活発化します。逆に減らす(金融引き締め)と、経済の過熱を抑える効果があります。
グラフで読み解く金融政策の歴史

歴史を変えた2つの金融緩和(長期グラフ)
2008年のリーマンショック以前、マネタリーベースは緩やかに増加していました。しかし、危機対応としてFRBがQE(量的緩和)を開始すると、グラフはまるで崖を登るように急上昇します。さらに、2020年のコロナショックでは、それを遥かに上回る規模の資金供給が行われました。この2つの出来事が、現代の金融市場のルールを根本から変えたのです。
金融引き締めの道のり(短期グラフ)
短期グラフを見ると、2022年をピークにマネタリーベースが減少傾向にあることが分かります。これはQT(量的引き締め)と呼ばれ、FRBが歴史的なインフレを抑えるために、市場から資金を吸収していることを示しています。2025年7月時点の現在地は5.74兆ドル。ピーク時からは減少したものの、依然としてコロナ以前とは比較にならない高水準にあります。
このデータの応用的な見方
マネタリーベースの増減は、株価や為替に大きな影響を与えます。一般的に、マネタリーベースが増えれば、市場に溢れたお金が株式市場に向かいやすくなるため、株価は上昇しやすくなります。また、通貨の供給量が増えることはその通貨の価値の希薄化に繋がるため、ドル安の要因にもなります。この理論を応用したのが、当サイトの「お宝グラフ」の一つである「日米マネタリーベースと為替の推移」です。ぜひ探してみてください。